最低にして最高の道

今、すとんとはまっている。

この詩を高村光太郎が発表した年齢、なんと自分の年齢と同じだ

。。。

最低にして最高の道


もう止さう。

ちひさな利慾とちひさな不平と、

ちひさなぐちとちひさな怒りと、

さういふうるさいけちなものは、

あゝ、きれいにもう止さう。

わたくし事のいざこざに

見にくい皺を縱によせて

この世を地獄に住むのは止さう。

こそこそと裏から裏へ

うす汚い企みをやるのは止さう。

この世の拔驅けはもう止さう。

さういふ事はともかく忘れて、

みんなと一緒に大きく生きよう。

見かけもかけ値もない裸のこころで

らくらくと、のびのびと、

あの空を仰いでわれらは生きよう。

泣くも笑ふもみんなと一緒に、

最低にして最高の道をゆかう。

高村光太郎

「大いなる日に」所収

1942